介護業界でのAI活用事例、メリットをご紹介
出生率の低下、医療技術の発展を背景に、日本の少子高齢化問題は深刻化しています。その受け皿である介護業界は、今後ますますニーズが高まっていくといえるでしょう。しかし、ケアを行う介護スタッフが不足し「介護難民」という言葉が生まれるなど問題化しています。 そうしたスタッフの業務負担を解消し、効率化を推進するために、近年AIというテクノロジーに注目が集まっています。一見、介護とAIに関連はないように思われますが、現場ではAIを活用した試みがスタートしています。 例えば、ケアマネジャーが行っていたケアプランの作成をサポートするなど、今まで担当者が抱え込んでいた作業をAIが肩代わりすることなどがあげられます。 この記事では、介護業界におけるAIの活用方法、その具体的な導入事例について紹介します。
-
介護業界でAIが注目される背景とは
上記理由から介護を必要とする人は年々増えていますが、先に述べたようにスタッフの不足により、介護を受けることができない「介護難民」が増加する傾向にあります。
特に、人口の集中している関東では、そうしたケースが多く発生しています。
こうした問題を解決するため、介護業界では積極的な人材の採用を進めていますが、介護に対しては「重労働」などのイメージがあり、スタッフにとって働きやすい環境を整えることが課題となっています。そこで、業務の一部をAIに担当させることで、業務の効率化をはかる動きが活発化しています。
AIを導入することで、以下のような効果が見込まれています。
・スタッフの業務を効率化することで負担を軽減
・介護サービスの質を底上げする
・介護サービスの利用者・その家族の満足度アップ(データ連携など)
こうした理由から、介護業界ではAI活用に注目が集まっています。 -
介護業界におけるAIの導入事例6つ
介護業界で注目を集めるAIの導入事例には、どのようなものがあるのでしょうか。
スタッフの業務を効率化する「ケアプラン作成サポート」、「介護施設までの送迎ルートの割り出し」、センサー・カメラ・ロボットによる「見守り」など、スタッフの負担を軽減するための機能がメインとなっています。
以下、導入事例を交えながら詳しく説明します。1.介護業界のAI導入事例~ケアプラン作成~
九州・東海の地域では、民間事業所がAIを活用したケアマネージャーのサポートとして「ケアプラン作成」を支援する取り組みがスタートしました。
AIが要支援者に対して将来の身体の状態を予測します。そして、今後の重症化を防止するための介護予防サービスを提案します。
ケアプラン作成に必要な専門知識の学習や情報収集をAIがサポートすることで、ケアプラン作成の業務負担軽減、またケアマネジメントの質を向上させることができます。
AIが得意とする作業を任せることで、ケアマネージャーは利用者への寄り添った対応・相談に注力することができます。
要介護についてのAIサービスはすでに存在していましたが、要支援者に対してのサポートは、これが初めての試みになります。
介護業界において、AIの活用が進んでいる証拠と言えるでしょう。2.介護業界のAI導入事例~介護リフォームの見積もり作成~
介護リフォームについて、見積作成にAIを活用した事例があります。
手間がかかるため、建設業者らに敬遠されがちな介護リフォーム。それを業界で初めてフランチャイズ化させました。
4万件の実績から見積AIアプリを自社開発し、特許を取得しました。
専用端末でアプリを立ち上げ、リフォーム対象の箇所を撮影することで寸法を割り出し、その場で見積もりの自動作成が可能となっています。見積もりだけでなく、契約書の電子署名をはじめ介護保険の申請書類など、事務業務を一括管理できるシステムもあわせて構築しました。円滑な連携が取れることで、工期についても大きく短縮できています。(通常1カ月以上かかる工期を、2週間も短縮した事例あり)
介護リフォームの経験が浅いスタッフであっても、均一なサービスの質を保つことができることが、このAIを活用したサービスの特徴です。3.介護業界のAI導入事例~送迎業務の効率化~
介護施設まで利用者を送迎する際に問題になるのが、その効率化です。
なぜなら、利用者ごとに以下のような制約条件があるためです。
・日によって利用者が異なる
・介護施設から自宅までの距離
・送迎の時間
・乗降にかかる時間
・自宅前まで大型車が乗り入れ可能かどうか
・車椅子や大型歩行器の利用が必要かどうか
・利用できる座席の位置
各利用者の制約に合わせてパズルのように送迎対象者を組み合わせることは大変です。そこで開発されたのが、効率的な送迎計画を作成するAIサービスです。
そのうえ、作成したルートを自動でカーナビに転送できるため、不慣れなドライバーでも安心できます。
送迎の実績の帳簿を作成することで、報告書を書く時間も短縮できるなど、毎日30分~60分から程度、業務を短縮できたとの声もあります。4.介護業界のAI導入事例~見守りをロボットで代行~
介護業界には、AIを活用した見守りロボットが導入されている事例があります。
入居者のプライバシーに配慮しつつ、カメラで画像認識によって介護の「見える化」を実現します。
転倒して大きな怪我をする前に、危険な動作に入る予兆(例:起き上がる)を検知します。生体センサーと組み合わせて見守ることで、重大な事故の防止に役立ちます。
スタッフが部屋を訪ねる回数を減らし、夜勤のストレスを軽減することにも役立ちます。
また万が一、事故が発生した場合においても、画像が保存されているため、入居者家族からの訴訟リスクを回避することができます。5.介護業界のAI導入事例~行動モニタリング~
入居者が異常な行動をした際にAIが検知し、スタッフにアラートで通知する行動モニタリングサービスがあります。
プライバシーに配慮した簡易センサーを設置することで、温度・湿度・人感・電力・ドア開閉などの情報から行動データを取得することができます。
入居者の「プライバシーの配慮」、そして一人ひとりの「行動把握」を両立することができることが特徴です。
介護事業者・入居者・家族の3者間のコミュニケーションを円滑化することを目的として開発されました。6.介護業界のAI導入事例~AI搭載の自立走行ロボット~
周囲の環境を認識、学習できるAIを搭載し、2本のアームで物を掴むことも可能な自立走行ロボットが介護業界に導入されています。
具体的には、紫外線を使用した消毒作業(感染症対策)、介護施設の夜間の見回りなどに対応しています。 -
さまざまな業界に活用できるAIモデル「MatrixFlow」
介護業界に特化したAIについて紹介しました。
人手不足の介護業界にはAIの導入による効率化が期待されています。
AIサービスというと、活用に専門スタッフが必要になるというイメージがありますが、近年では手軽に利用できるサービスが増えています。
その1つが、プログラミング不要のAI構築プラットフォーム「MatrixFlow」です。
処理単位のブロックをドラッグ&ドロップし、繋ぐことでアルゴリズムの開発が可能です。
また、データの管理や作成したアルゴリズムの管理など、AI構築に関わるすべての工程を一元的に管理することができます。
介護業界をはじめ小売業界など、さまざまな業種・業界において活用することが可能です。
たとえ、退職や異動などで担当者が変わったとしても、プラットフォーム上にすべてのデータが蓄積されているため、クオリティが落ちる心配がないことも特徴です。
AIを活用することで、担当者が本来注力すべき業務に集中することが可能となります。
ぜひ、詳細はお問い合わせください。
編集部Pickup記事
-
ノーコードでAIを開発する方法とは?開発事例・無料の開発プラットフォームを紹介
ここ数年、国内外の開発者の間で「ノーコード(NoCode)」という言葉がよく聞かれます。 ノーコードとは、文字通りコードいらずでWebサイトやWebサービスを開発する手法のことです。 このノーコードの開発手法を使って、AI(人工知能)を開発しようとする動きが出てきています。 本記事では、ノーコードでAIを開発して自社課題を解決したい方に向けて、ノーコードでどんなことができるのかを解説していきます。 ノーコードを使ってAIを開発した事例も紹介しているので、ぜひ参考にしてみてください。
-
機械学習のビジネスにおける活用事例を徹底解説
様々な分野・企業で、AIや機械学習の活用が進んでいます。 iPhoneのSiriやGoogleのアレクサなど、日常生活にも溶け込んでいるほどです。 AIにデータを機械学習させれば、膨大な時間がかかる作業も分析も一瞬で終えることができます。 AIは学習させるデータでどんな使い方もできるため、その可能性は無限大です。 本記事では、AIや機械学習をビジネスに活用する方法や、導入事例をご紹介します。
-
AIツール・開発プラットフォームおすすめ13選!無料AIツールも?
AI(人工知能)を使ったツールやアプリは、ここ数年で急激に増えました。身近なところだと、有名画家風のイラストが作成できるアプリや音声読み上げソフトなど、一度は耳にしたことがある方もいるのではないでしょうか。 企業においても課題解決ができるAIツールや、AIを開発できるプラットフォームへ注目が集まっています。ですが、AIツールと一口にいっても、開発できるAIの種類や解決できる課題も様々です。 本記事では、AIを開発できるプラットフォームや、無料で使える便利なAIツールをご紹介します。AIツールを使ってどんなことができるのか、ツールによる違いを知りたい方は必見です。
-
AIによる需要予測の仕組みとは?導入事例・費用・アルゴリズムを解説
過去の販売データを元に商品の発注数や売れ行きを予測するのは、小売業界では当たり前に行われています。 ですが、経験や勘に頼った予測は個人の力量に依存するため、予測に再現性がありません。予測の精度も人によってバラバラなため、常に高い精度で予測することは難しいです。 こうした課題を解決する方法の1つとして、AIを使った需要予測が注目されています。AIを使うことで、スキルに依存しない高精度で需要予測が期待されているのです。 本記事では、AIを使った需要予測の仕組みや導入事例について解説していきます。需要予測をして在庫管理の最適化や売上増加を狙っている方は、ぜひ参考にしてみてください。
-
製造業におけるAI活用事例23選!各社の導入方法・例をご紹介
ここ数年でAi技術は格段に進化を遂げています。様々な領域でAIの活用が進んでいますが、製造業ではどのくらいAIの導入が進んでいるのでしょうか。製造現場での実用化にはいまだ課題も残っています。AIを活用できる人材がいない、AIの導入方法がわからず、活用が進んでいない企業も多いのではないでしょうか。 この記事では、実際にその仕組みや導入のメリット、成功・失敗事例を紹介していきます。製造業でAIを導入するうえでの注意点についても解説していますので、ぜひ参考にしてください。
-
ディープラーニング(深層学習)とは?AI・機械学習との違いを簡単に解説
ディープラーニング、AI、機械学習。誰しも、テレビや本で一度は耳にしたことがあると思います。 ですがこれらが何を指しているのか、なぜ注目を集めているのか知っている方は少ないのではないでしょうか。 本記事ではAIを学んだことがない方向けに、ディープラーニングとは何なのかを簡単に解説します。 ディープラーニングと機械学習の違いがわからない方や、ディープラーニングの活用事例を知りたい方も必見です。
関連した事例
-
予測分析ツールおすすめ7選比較!AIで予測できること・無料ツールはある?
将来の売上や株価を予測することができれば、ビジネスや投資において非常に有利に動けます。しかし、人の勘や経験に頼った予測には限界があり、正確な予測をすることは困難です。 そこで、あらゆる業界で「予測分析ツール」が注目されています。予測分析ツールを使えば、膨大なデータを分析し、過去の傾向をもとに未来を予測できます。さらに、機械学習や人工知能を使った予測分析ツールを活用すれば、誤差を減らしてより高い精度で予測を行うことができます。 本記事では、予測分析ツールでどんなことが予測できるのか、おすすめの予測分析ツールをご紹介します。AIやツールを使った予測に興味がある方は、ぜひ参考にしてみてください。
-
AI開発外注の費用相場・期間は?おすすめ開発会社を解説
AIを開発したいと思った時にまずぶつかる壁は、「自社内で開発するか外注するか」です。 社内に開発人材がいる場合もいない場合も、AI開発の外注は選択肢の1つとして考えられます。 AI開発の外注にはメリット・デメリットがあるため、AI開発において重視する内容によって外注が最適かどうか変わってきます。 本記事では、AI開発を外注しようか検討している方に向けて、AI開発の外注にかかるコストやメリット・デメリットを解説します。さらに、AI開発に強いおすすめの外注先もご紹介するので、開発会社選びの参考にしてみてください。
-
ノーコードでAIを開発する方法とは?開発事例・無料の開発プラットフォームを紹介
ここ数年、国内外の開発者の間で「ノーコード(NoCode)」という言葉がよく聞かれます。 ノーコードとは、文字通りコードいらずでWebサイトやWebサービスを開発する手法のことです。 このノーコードの開発手法を使って、AI(人工知能)を開発しようとする動きが出てきています。 本記事では、ノーコードでAIを開発して自社課題を解決したい方に向けて、ノーコードでどんなことができるのかを解説していきます。 ノーコードを使ってAIを開発した事例も紹介しているので、ぜひ参考にしてみてください。
-
ディープラーニング(深層学習)とは?AI・機械学習との違いを簡単に解説
ディープラーニング、AI、機械学習。誰しも、テレビや本で一度は耳にしたことがあると思います。 ですがこれらが何を指しているのか、なぜ注目を集めているのか知っている方は少ないのではないでしょうか。 本記事ではAIを学んだことがない方向けに、ディープラーニングとは何なのかを簡単に解説します。 ディープラーニングと機械学習の違いがわからない方や、ディープラーニングの活用事例を知りたい方も必見です。
-
プログラミングでAIを開発する方法!必須のプログラミング言語・入門知識を解説
近年急速に進化しているAI(人工知能)。 AIを活用すれば、今まで大量の人と時間を投下していた業務も効率よく精度高く遂行できます。 人と同じような動きができるためすごい存在に思えるAIですが、プログラミングを学べば初心者でも開発が可能です。 本記事では、プログラミングをしてAIを開発する方法やAI開発におすすめのプログラミング言語をご紹介します。
-
機械学習(ML)とは? メリット・種類・業界や課題別の活用例・実施方法を解説
機械学習(Machine Learning)とは、コンピューター(Machine)が与えられた大量のデータを処理・分析することでルールやパターンを発見する技術・手法のことです。学習の結果明らかになったルール・パターンを現状に当てはめることで、精度の高い将来予測が可能となります。 高度なコンピューターを使用することで、人間の脳では処理しきれない複雑な要素を加味した分析・学習が可能となりました。その結果、近年ではさまざまな領域において人間による作業の精度向上・効率化に役立てられています。自動運転や医療、人間の購買行動の分析など、さまざまなビジネス領域で機械学習が実用化されており、今後のマーケットで生き残っていくためには必須の技術になりつつあるといえるでしょう。 本記事では、機械学習(ML)の概要やメリット、種類に加え、業種別・課題別の活用例を紹介します。実際に取り入れる際の作業フローも紹介しているので、機械学習の活用に興味がある方はぜひ参考にしてみてください。
-
データドリブン経営とは?成功事例からわかる必要性・メリット解説
ビジネスでデータを活用するのは、今やどの企業も当たり前に行なっています。 ですが、データを効果的に活用できている企業はあまり多くありません。 データを部分的にしか活用できていない、人によってデータ活用のレベルが異なる企業が多いのではないでしょうか。反対に、データを活用しようと意気込んで収集した結果、膨大なデータを持て余している場合も見受けられます。 このように、データを有効活用できていないと感じる方々に知っていただきたいのが、「データドリブン経営」という考え方です。本記事では、データドリブン経営とは何かを簡単に解説し、データドリブンで数字改善した成功事例をご紹介します。データを活用して売上を伸ばしたい、コスト改善したいと考えている方は、ぜひ参考にしてみてください。
-
AIやExcelを活用したコールセンターの入電数予測の方法
コールセンターにおけるコール予測(呼量予測、forecaster)とは、お客様からの問い合わせなどセンターで受信する電話の量を予測することをいいます。 コールセンターの運用コストを増加させる要因のうち大きなものが、コミュニケーターの人件費です。コミュニケーターは顧客からの入電に応じてオペレーションの対応をするため、実際の入電数よりも多くのコミュニケーターを配置すると、対応がなく待ち状態のコミュニケーターが増えて、不要な人件費の増加に繋がります。また、逆に配置人数が少ないと呼び出し中でつながらないなどのクレームの要因になりかねません。適正な人員をコンタクトセンターに配置することで、十分な顧客満足度が提供できる状態でオペレーションを行っていることが理想です。今回は、Excelを活用したコール予測、AI(人工知能)による機械学習を用いた時系列分析で、コール予測を実現する方法をご紹介します。
-
予測分析とは?活用事例とその手法・ツールをご紹介
予測分析とは、過去の行動パターンを特定し、将来の結果を予測するために、大量のデータに数理モデルを適用する手法です。 機械学習、データマイニング、統計アルゴリズムなどの複数の組み合わせがもたらす「予測的手法」により、予測分析ツールは、単純な相関付け以上の機能を実装できます。ビジネス分野では、予測分析が以下に示すようなさまざまな用途に利活用されています。 ・需要と供給のより正確な予測コンピューターネットワークに悪影響を及ぼす脅威と潜在的問題の特定 ・保険サービスや金融サービスにおけるセキュリティリスクの低減 ・クレジットカード詐欺のリアルタイム検出 予測分析機能を組み込んだソフトウェアが増えつつあり、これはあらゆる規模の組織体でユーザーにとって身近なものになっています。予測分析はデータサイエンスや高度な分析に関する訓練を受けていないエンドユーザーにも実務上の価値をもたらします。これは、まさにすべてのユーザーが恩恵を受ける機会を提供することに値します。この概念を「データの民主化」と呼びます。誰もがデータを利用してより良い意思決定を下せるように、組織全体でデータを誰もが利用できるようにするという概念です。 本記事では、予測分析がなぜ重要なのか、予測分析の実活用例、予測分析の手法、機械学習やデータマイニングなどの他のテクノロジーとの関係、モデルの役割、予測分析を始めるにあたってのヒントについてご紹介します。