データサイエンティストは消える?仕事がなくなるというのは本当?
データサイエンティストという職業をご存じでしょうか。スマホを手に生活をするスタイルに移行したことで、膨大なデータ(ビッグデータ)が日々生まれています。これらのデータを企業の課題解決に活かすことが、データサイエンティストの仕事と言えます。そのため、ビジネスとITどちらの世界にも精通することが求められます。 企業側の需要も高まり、高い年収も見込まれるようになりました。そのため、データサイエンティストを目指す学生・ビジネスマンが増える傾向にあります。 一方で、データを扱うという業務から「将来的にAIに取って代わられて、データサイエンティストは消えるのではないか?」という議論も生まれています。 その観点から、データサイエンティストの仕事内容、将来性、重要性、また最新のAIの動向も含めて紹介していきます。
-
データサイエンティストとは?
データサイエンティストとは、日々蓄積される個人・企業の膨大なデータを活用し、新しい価値、課題解決までを提供できる人材のことを指します。
膨大なデータは、大多数の人々が常にスマホを片手に行動するようになったことで生まれたものです。今こうしている瞬間にも、誰かが何かを検索、SNSに投稿しています。こうした大量の情報が、蓄積され続けています。
この膨大なデータを「企業活動に活かしたい」と企業側が強く要望したとしても、現状そのスキルを持ち合わせている人材は不足しています。データサイエンティストの需要が高まっている業界は多岐に渡っています。一見ITとは縁がないように思える小売業界・サービス業界なども、セールのタイミングや食材のロスなど、解決すべき問題は多くあります。
企業はこの流れを受けて、データサイエンティストの獲得・育成に力を入れようとしていますが、そこに明確な定義はありません。対応領域も広いことから、問題も生まれています。
その課題解消のために設立された一般社団法人に「データサイエンティスト協会」があります。
企業が期待するデータサイエンティストの役割と、人材が保持するスキルのミスマッチにより、職場において人材の経験・能力が活かせない状況を打開すべく、設立された協会です。
このように膨大なデータを扱う新たな職業「データサイエンティスト」の在り方については、企業・人材ともに試行錯誤を繰り返している最中であると言えるでしょう。 -
データサイエンティストの具体的な仕事内容
データサイエンティストの仕事は、データの収集・分析・加工、レポート作成、データから新たに見出された知見を業務へ組み込むことがメインとなります。
企業によって異なる場合もありますが、一般的にまず顧客へ課題のヒアリングを行い、費用対効果などを鑑みながら、着手する優先順位を決定します。その後、課題を明らかにし、その解決方法を膨大なデータの中から、規則性などの特性を取っ掛かりとして模索します。 -
データサイエンティストとデータアナリストの違い
データサイエンティストとよく似た言葉に、データアナリストという言葉があります。データアナリストは「データを分析・収集」に特化した職種です。
そこに統計学・企業の課題解決などのコンサル的視点を追加した職種がデータサイエンティストです。そのため、データアナリストよりもデータサイエンティストの方が、より上位の職種であると言うことができます。 -
データサイエンティストは消える?その理由とは
データサイエンティストの必要性が論じられる一方で、将来AI (Artificial Intelligence:人工知能)にデータサイエンティストの仕事が取って代わられるのではないか、という疑問も出ています。
現在AIはディープラーニングという手法から、目覚ましい勢いで精度を上げています。
MatrixFlowというサービスを例にとって紹介します。
MatrixFlowは、データ分析・機械学習の知識がない人物であっても、精度の高いAIを構築できるサービスです。
AIアルゴリズム、それに付随する自動化されたパラメータなどによって、プログラミングは一切不要となっており、マウス操作のみでデータの分析からデータ活用までが可能となるUXとなっています。
そのため、データサイエンティストでなくても、簡単に膨大なデータの活用が可能です。
データの前処理、パラメータチューニング、アルゴリズムの選定などの煩雑な作業は、AIによって自動化されます。データサイエンティストの作業の部分は、こうして自動化できてしまいます。
では、それによって「データサイエンティストは消える」と言い切ることができるのでしょうか。
答えは「否」です。
データサイエンティストの一部の作業はAIに置き換わるかもしれませんが、データ活用という「主体的に企業に働きかけて改善を促す」ことは、人でないとできないことです。
また「どのようにAIを組み込んでいくべきか」「ビジネスとしてAIをどう活用していくか」というビジネス的観点からAIを使いこなすことも求められます。
それこそデータサイエンティストの課題の発見力にかかっていると言えるでしょう。
そのため、よりコンサル的な視点と「データを読めて、問題がどこにあるのかをきちんと把握できる」ことが、データサイエンティストのスキルとして求められます。反対に、モデル設計だけで問題設定できないデータサイエンティスト、分析・収集の作業に特化したデータアナリストの需要は、将来的に落ちていくでしょう。
-
データサイエンティストを目指す方法
データサイエンティストの養成体制が整っていない現在、データサイエンティストを目指すにはどんな方法があるのでしょうか。具体的に紹介します。
日本では、2012年以降からデータサイエンス学部を設立する大学が現れています。修士・博士号が取得できる大学院も増加傾向にあります。
冒頭で紹介した一般社団法人「データサイエンティスト協会」では、個人が情報収集・講座の受講・受験ができるよう「コミュニティ形成」「人材の定義・育成・評価」「シンポジウム」を通して、働きかけを行っています。
そういった入口から、データサイエンティストを目指すこともできるでしょう。データサイエンティストの前職は、統計学者・ITエンジニア・ビジネスマン出身が多い傾向にあります。
データ活用を行う観点から、データサイエンティストになるにあたっては、数字に強い統計学者・ITエンジニアが有利であると言えるでしょう。
知識の面だけ見ると、文系学部出身のビジネスマンが、統計学とともにIT知識やスキルを身につけるのは高いハードルがあると言えるからです。しかし、今後のAI活用などの傾向を見ると、どちらかというと既存ビジネスの課題・問題点を深く理解していることが求められます。
その点では、ビジネスマンに利があると言えそうです。
その視点が欠如していると、データを見ても「どこから手を付けて良いのかが分らない」という状況になりがちだからです。ITエンジニアがデータサイエンティストを目指す場合には、統計学を学ぶとともに、マーケティング・ビジネススキルを高める必要があります。
特にデータをどう活用すれば費用対効果がでるのか、意識・把握をしながら勉強すると、効果が出やすいと言えます。近年ではITエンジニアもシステムを構築することとは別に、その操作性であるUI(ユーザーインターフェース)とUX(ユーザーエクスピアリエンス)の考え方が重要だと言われるようになりました。
システムを使う人々の「使いやすさ」「使いづらさ」を課題として意識することが、ビジネス的視点を磨くことに通じます。
サイトのスクロール・クリック・滞在時間を可視化するツールの活用も進んでいます。「データサイエンティスト的視点」を磨く機会は、ITエンジニアの業務内にも多く含まれていると言えるでしょう。 -
データサイエンティストは消えるのか?まとめ
データサイエンティストの職業の概要、目指し方、AIとの差別化などについて紹介しました。
データサイエンティストはスマホの普及や技術の発展により、溢れるデータを企業の課題解決に活用する職業です。データサイエンティストは、データ分析・収集を仕事とするデータアナリストの上位的職業と言うことができます。
データサイエンティストになるには、大学で学ぶほか、資格を取得するなどの方法があります。
データ活用という視点から、統計学者・ITエンジニアなど、理系の素養が有利に働くと言えるでしょう。しかし、現在ではMatrixFlowというプログラミング不要・マウス操作からデータ分析ができる便利なAIサービスの活用が企業の現場で進んでいます。
こうしたAIの精度アップなどから、技術面よりも、今はむしろ企業の問題解決をするためのビジネスへの深い洞察、また「コンサルティング」的視点が、データサイエンティストに求められると言えるでしょう。
AIを活用することで、データサイエンティストはよりビジネス分野に特化して、問題解決に集中することが可能となります。
編集部Pickup記事
-
ノーコードでAIを開発する方法とは?開発事例・無料の開発プラットフォームを紹介
ここ数年、国内外の開発者の間で「ノーコード(NoCode)」という言葉がよく聞かれます。 ノーコードとは、文字通りコードいらずでWebサイトやWebサービスを開発する手法のことです。 このノーコードの開発手法を使って、AI(人工知能)を開発しようとする動きが出てきています。 本記事では、ノーコードでAIを開発して自社課題を解決したい方に向けて、ノーコードでどんなことができるのかを解説していきます。 ノーコードを使ってAIを開発した事例も紹介しているので、ぜひ参考にしてみてください。
-
機械学習のビジネスにおける活用事例を徹底解説
様々な分野・企業で、AIや機械学習の活用が進んでいます。 iPhoneのSiriやGoogleのアレクサなど、日常生活にも溶け込んでいるほどです。 AIにデータを機械学習させれば、膨大な時間がかかる作業も分析も一瞬で終えることができます。 AIは学習させるデータでどんな使い方もできるため、その可能性は無限大です。 本記事では、AIや機械学習をビジネスに活用する方法や、導入事例をご紹介します。
-
AIツール・開発プラットフォームおすすめ13選!無料AIツールも?
AI(人工知能)を使ったツールやアプリは、ここ数年で急激に増えました。身近なところだと、有名画家風のイラストが作成できるアプリや音声読み上げソフトなど、一度は耳にしたことがある方もいるのではないでしょうか。 企業においても課題解決ができるAIツールや、AIを開発できるプラットフォームへ注目が集まっています。ですが、AIツールと一口にいっても、開発できるAIの種類や解決できる課題も様々です。 本記事では、AIを開発できるプラットフォームや、無料で使える便利なAIツールをご紹介します。AIツールを使ってどんなことができるのか、ツールによる違いを知りたい方は必見です。
-
AIによる需要予測の仕組みとは?導入事例・費用・アルゴリズムを解説
過去の販売データを元に商品の発注数や売れ行きを予測するのは、小売業界では当たり前に行われています。 ですが、経験や勘に頼った予測は個人の力量に依存するため、予測に再現性がありません。予測の精度も人によってバラバラなため、常に高い精度で予測することは難しいです。 こうした課題を解決する方法の1つとして、AIを使った需要予測が注目されています。AIを使うことで、スキルに依存しない高精度で需要予測が期待されているのです。 本記事では、AIを使った需要予測の仕組みや導入事例について解説していきます。需要予測をして在庫管理の最適化や売上増加を狙っている方は、ぜひ参考にしてみてください。
-
製造業におけるAI活用事例23選!各社の導入方法・例をご紹介
ここ数年でAi技術は格段に進化を遂げています。様々な領域でAIの活用が進んでいますが、製造業ではどのくらいAIの導入が進んでいるのでしょうか。製造現場での実用化にはいまだ課題も残っています。AIを活用できる人材がいない、AIの導入方法がわからず、活用が進んでいない企業も多いのではないでしょうか。 この記事では、実際にその仕組みや導入のメリット、成功・失敗事例を紹介していきます。製造業でAIを導入するうえでの注意点についても解説していますので、ぜひ参考にしてください。
-
ディープラーニング(深層学習)とは?AI・機械学習との違いを簡単に解説
ディープラーニング、AI、機械学習。誰しも、テレビや本で一度は耳にしたことがあると思います。 ですがこれらが何を指しているのか、なぜ注目を集めているのか知っている方は少ないのではないでしょうか。 本記事ではAIを学んだことがない方向けに、ディープラーニングとは何なのかを簡単に解説します。 ディープラーニングと機械学習の違いがわからない方や、ディープラーニングの活用事例を知りたい方も必見です。
関連した事例
-
予測分析ツールおすすめ7選比較!AIで予測できること・無料ツールはある?
将来の売上や株価を予測することができれば、ビジネスや投資において非常に有利に動けます。しかし、人の勘や経験に頼った予測には限界があり、正確な予測をすることは困難です。 そこで、あらゆる業界で「予測分析ツール」が注目されています。予測分析ツールを使えば、膨大なデータを分析し、過去の傾向をもとに未来を予測できます。さらに、機械学習や人工知能を使った予測分析ツールを活用すれば、誤差を減らしてより高い精度で予測を行うことができます。 本記事では、予測分析ツールでどんなことが予測できるのか、おすすめの予測分析ツールをご紹介します。AIやツールを使った予測に興味がある方は、ぜひ参考にしてみてください。
-
AI開発外注の費用相場・期間は?おすすめ開発会社を解説
AIを開発したいと思った時にまずぶつかる壁は、「自社内で開発するか外注するか」です。 社内に開発人材がいる場合もいない場合も、AI開発の外注は選択肢の1つとして考えられます。 AI開発の外注にはメリット・デメリットがあるため、AI開発において重視する内容によって外注が最適かどうか変わってきます。 本記事では、AI開発を外注しようか検討している方に向けて、AI開発の外注にかかるコストやメリット・デメリットを解説します。さらに、AI開発に強いおすすめの外注先もご紹介するので、開発会社選びの参考にしてみてください。
-
AIツール・開発プラットフォームおすすめ13選!無料AIツールも?
AI(人工知能)を使ったツールやアプリは、ここ数年で急激に増えました。身近なところだと、有名画家風のイラストが作成できるアプリや音声読み上げソフトなど、一度は耳にしたことがある方もいるのではないでしょうか。 企業においても課題解決ができるAIツールや、AIを開発できるプラットフォームへ注目が集まっています。ですが、AIツールと一口にいっても、開発できるAIの種類や解決できる課題も様々です。 本記事では、AIを開発できるプラットフォームや、無料で使える便利なAIツールをご紹介します。AIツールを使ってどんなことができるのか、ツールによる違いを知りたい方は必見です。
-
ノーコードでAIを開発する方法とは?開発事例・無料の開発プラットフォームを紹介
ここ数年、国内外の開発者の間で「ノーコード(NoCode)」という言葉がよく聞かれます。 ノーコードとは、文字通りコードいらずでWebサイトやWebサービスを開発する手法のことです。 このノーコードの開発手法を使って、AI(人工知能)を開発しようとする動きが出てきています。 本記事では、ノーコードでAIを開発して自社課題を解決したい方に向けて、ノーコードでどんなことができるのかを解説していきます。 ノーコードを使ってAIを開発した事例も紹介しているので、ぜひ参考にしてみてください。
-
プログラミングでAIを開発する方法!必須のプログラミング言語・入門知識を解説
近年急速に進化しているAI(人工知能)。 AIを活用すれば、今まで大量の人と時間を投下していた業務も効率よく精度高く遂行できます。 人と同じような動きができるためすごい存在に思えるAIですが、プログラミングを学べば初心者でも開発が可能です。 本記事では、プログラミングをしてAIを開発する方法やAI開発におすすめのプログラミング言語をご紹介します。
-
機械学習(ML)とは? メリット・種類・業界や課題別の活用例・実施方法を解説
機械学習(Machine Learning)とは、コンピューター(Machine)が与えられた大量のデータを処理・分析することでルールやパターンを発見する技術・手法のことです。学習の結果明らかになったルール・パターンを現状に当てはめることで、精度の高い将来予測が可能となります。 高度なコンピューターを使用することで、人間の脳では処理しきれない複雑な要素を加味した分析・学習が可能となりました。その結果、近年ではさまざまな領域において人間による作業の精度向上・効率化に役立てられています。自動運転や医療、人間の購買行動の分析など、さまざまなビジネス領域で機械学習が実用化されており、今後のマーケットで生き残っていくためには必須の技術になりつつあるといえるでしょう。 本記事では、機械学習(ML)の概要やメリット、種類に加え、業種別・課題別の活用例を紹介します。実際に取り入れる際の作業フローも紹介しているので、機械学習の活用に興味がある方はぜひ参考にしてみてください。
-
データドリブン経営とは?成功事例からわかる必要性・メリット解説
ビジネスでデータを活用するのは、今やどの企業も当たり前に行なっています。 ですが、データを効果的に活用できている企業はあまり多くありません。 データを部分的にしか活用できていない、人によってデータ活用のレベルが異なる企業が多いのではないでしょうか。反対に、データを活用しようと意気込んで収集した結果、膨大なデータを持て余している場合も見受けられます。 このように、データを有効活用できていないと感じる方々に知っていただきたいのが、「データドリブン経営」という考え方です。本記事では、データドリブン経営とは何かを簡単に解説し、データドリブンで数字改善した成功事例をご紹介します。データを活用して売上を伸ばしたい、コスト改善したいと考えている方は、ぜひ参考にしてみてください。
-
AIやExcelを活用したコールセンターの入電数予測の方法
コールセンターにおけるコール予測(呼量予測、forecaster)とは、お客様からの問い合わせなどセンターで受信する電話の量を予測することをいいます。 コールセンターの運用コストを増加させる要因のうち大きなものが、コミュニケーターの人件費です。コミュニケーターは顧客からの入電に応じてオペレーションの対応をするため、実際の入電数よりも多くのコミュニケーターを配置すると、対応がなく待ち状態のコミュニケーターが増えて、不要な人件費の増加に繋がります。また、逆に配置人数が少ないと呼び出し中でつながらないなどのクレームの要因になりかねません。適正な人員をコンタクトセンターに配置することで、十分な顧客満足度が提供できる状態でオペレーションを行っていることが理想です。今回は、Excelを活用したコール予測、AI(人工知能)による機械学習を用いた時系列分析で、コール予測を実現する方法をご紹介します。
-
予測分析とは?活用事例とその手法・ツールをご紹介
予測分析とは、過去の行動パターンを特定し、将来の結果を予測するために、大量のデータに数理モデルを適用する手法です。 機械学習、データマイニング、統計アルゴリズムなどの複数の組み合わせがもたらす「予測的手法」により、予測分析ツールは、単純な相関付け以上の機能を実装できます。ビジネス分野では、予測分析が以下に示すようなさまざまな用途に利活用されています。 ・需要と供給のより正確な予測コンピューターネットワークに悪影響を及ぼす脅威と潜在的問題の特定 ・保険サービスや金融サービスにおけるセキュリティリスクの低減 ・クレジットカード詐欺のリアルタイム検出 予測分析機能を組み込んだソフトウェアが増えつつあり、これはあらゆる規模の組織体でユーザーにとって身近なものになっています。予測分析はデータサイエンスや高度な分析に関する訓練を受けていないエンドユーザーにも実務上の価値をもたらします。これは、まさにすべてのユーザーが恩恵を受ける機会を提供することに値します。この概念を「データの民主化」と呼びます。誰もがデータを利用してより良い意思決定を下せるように、組織全体でデータを誰もが利用できるようにするという概念です。 本記事では、予測分析がなぜ重要なのか、予測分析の実活用例、予測分析の手法、機械学習やデータマイニングなどの他のテクノロジーとの関係、モデルの役割、予測分析を始めるにあたってのヒントについてご紹介します。